UXの上位にあるBX (Brand Experience) ブランド体験創出とは

UXの上位にあるBX (Brand Experience) ブランド体験創出とは

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ネオマデザインは、BX (Brand Experience, ブランド体験) 業務も得意としています。

え?BX?BXという言葉を初めて聞く人も多いと思います。

BXとは、Brand Experience のことで日本語にするとブランド体験(創出)。UX (User Experience) が、製品やサービスに対して直接的なユーザー(利用者)を対象するのに対して、業界や社員スタッフ、地域、国はたまた地球まで含めて社会や環境までも対象にしたブランド価値を設計・創造するのがBXです。

BX は、UX, CXにも密接に関わっており、特に企業戦略やサービス戦略の根幹に関わってきます。UX(CX) が良くてもBXが悪ければ、企業やサービスブランドの悪化を招き、結果的に顧客の評価も下がります。

中長期的な視点で戦略を考える場合にはBXが更に重要になります。

今回は、そのBX についてUXを振り返りながら説明します。

まずはUX

まず、UXをおさらいします。

UXとは、ユーザー(利用者)の主観・体験を中心に考えます。若干乱暴な言い方になりますが、「楽しい」「面白い」「わかりやすい」「気持ちよい」「嬉しい」「綺麗だ」「つまらない」「飽きた」といった形容詞・形容動詞で表現される人間の感覚や心理を突き詰め商品やサービスのユーザーの体験価値を向上させます。

特に昨今はモノ消費からコト消費といわれる時代で、体験・経験の価値が重視されてきています。そんな「体験」にフォーカスしていくのがUXです。「UX」で検索するとIT業界での事例が多くでてきますが、決してUX は IT業界特化ではありません。ユーザー・顧客が存在する業界、もっと言ってしまうと「人」を対象にする、「人」が介在する業界すべてに適用できると私は考えています。つまりほとんどの業界にUXは通用します。

なお、CX (Customer Experience: 顧客・カスタマー体験) という言葉もありますが、これは UX が特定のサービスや利用者を指すのに対して、CXは複数の商品やサービス全体に関わる全ての顧客を指しています。一般的な小売店や企業にとっては、ユーザーもカスタマー(顧客)もどちらも重要です。(※UXとCXについては、人によって捉え方が様々あります。CXにブランド評価などを入れる場合もあります。よって今回は CX については言及しません)

UXについては、Neoma Design Blog でも何度か取り上げていますので興味ある方は下記も御参考ください。

BXとUX

さて、BX (Brand Experience, ブランド体験) とはなんでしょうか? 上図のように、UX の更に外側にあるのがBXです。

BXとは、UX, CX の更に上位の視点から体験を創っていきます。UX, CX の中では、会社やサービス全体のブランド価値やアイデンティティのデザインまで取り上げることは稀です。BXでは対象が、取り巻く社会環境や業界にはじまり日本、世界、地球から見てどうなのか、といったレベルまで広がります。地球なんて大げさな、と思うかと思いますが、世界で有名な日本のグローバルカンパニー、例えば、トヨタ・ソニー・ユニクロなど、常に地球レベルで戦略とブランドを考えています。

また、BXにおいては、自社の社員・スタッフの体験についても考えます。顧客体験がいくら良くなって収益が上がっても、そこで働くスタッフの体験価値がボロボロでは、この会社(サービス)は良くないな、といつか見抜かれて、「商品は良いけど買うの止めよう」とブランド価値が下がります。こうなると中長期的にはマイナス価値です。

BXデザインにおいては、

・会社、店舗、サービスの「ブランド」「アイデンティティ」「理念」「ミッション」に関わる体験創り

・対象は顧客だけでなく、社員スタッフ、社会環境や関係する業界、場合によっては国境を超えて地球全体

・中長期的または恒久的

といった視点で考えていきます。つまり非常に上位概念の戦略から着手していくことになります。その戦略の中で、ここは対象はユーザーに絞ったほうがいい、より具体的にユーザーに対して体験デザインしたい、という場合はUXデザインで、と落としていきます。会社やサービスのロゴデザインなどCI, BI, VI も BX の活動の1つとも言えるでしょう。いくつか例をあげてみます。

◎小売店

お客様のためにと店舗前を毎日スタッフで掃除することにしました。やはり店前が綺麗だと入りやすいし気持ちよいですよね。店内も含めて清潔であることは、その店の姿勢も分かりユーザーの体験価値(UX)は向上します。雨の日に濡れずに傘が畳めるように店舗エントランスに ‘ひさし’ などもあると更に良いですね。

一方で、掃除の際にゴミ拾わずに隣の店舗前や対面側に寄せたり、忙しいのに掃除が優先とスタッフの工数を割いてしまったらどうなるでしょう。あの店は自分勝手だ、と噂されるかもしれません。余所の店の前を掃除する義務などない!という意見もごもっともです。しかし、もし “人を呼んで活気溢れる商店街にしたい”、”うちは地球に優しくがモットーの店舗だ” という理念や気持ちがもし店長や経営者にあったとしたらどうでしょうか?

◎電子マネー

近年、キャッシュレス化が非常に進んできています。○○Pay といったサービスも随分増えてきました。現金を持っていなくても、コンビニやスーパーなどの買い物はスマートフォン1つで支払いできます。非常に簡単で、かつ、ユーザーにとってはポイントなどの還元もあるので、UXとして非常に良くできてると思われます。

一方で、○○Payが乱立しすぎて、これからユーザーになろうと言う人は混乱するのではないでしょうか。手続きもまだまだ複雑です。またお店によっては対応していたりしてなかったりと差があり、わざわざそれをユーザーが確認しなければなりません。お店のスタッフも、どの支払いかを聞いて、それに合わせた決済方法手順を踏まねばならず覚えることがどんどん増えてきます。今のクレジットカードぐらい、とにかく出せばどこのクレジットカードであっても支払い可能、ぐらいにならないとまだまだ “決済業界におけるUX” としては不十分に感じます。


BXとはこのように理念、ミッション、業界や社会といったUXよりも高く広い視点から考えます。なお、どちらの例もCX視点でも良くないですね(目の前の直接的なユーザーの体験を重要視しているため)。

◎Apple

先の事例は、UXが良くてもBXが悪くなる例を示していますが、その逆もありえます。UXが悪くても、しっかりBXがしていれば顧客が離れない、まさにファンになる例もあります。Apple はまさにこの BX の戦略が良くできている会社の1つです。

Apple 製品の全てがUI, UXが優れているというわけではありません。マウスの裏や iPad にペンシルを突き刺す充電方法などはかなり酷評されたのはまだ記憶に新しいかと思います。私自身、 iPhone や mac を使っていてなんだこれ、という残念な体験があります。しかし、カスタマーセンターサポートセンターでの実際の対応や Apple Store での購入体験、Apple 製品やサービスとの連携体験 (CX) など総合的に考えると Apple の BX は良くできていて、結果的に、UI, UX がダメな部分も「そのうち直してくれるだろう」「それでも他社よりは評価できる」というポジティブな気持ちになっているのです…

まとめ

BXCXUXと経営戦略ピラミッド(Neoma Design)

ユーザーや顧客の体験価値(UX, CX) を断片的に、局所的に見ていては全体を俯瞰できません。ブランド体験(BX)は、企業やサービスが顧客と接するすべてのタッチポイントをカバーしていきます。

そのためには、企業や経営者が改めて

「なぜ我々の会社(サービス)が存在すべきなのか?使命は?」

といった根本から考えて行く必要があるのです(ゴールデンサークル理論でいう WHY に帰着します|上図参照)。もちろん、UX, CX, BX すべて良いのが理想です。

私は20年以上大手家電メーカーに勤務していましたが、そこでは目の前のユーザーだけが顧客ではなく、世界中の人々が顧客なんだ、ということを常に意識していました。地球上のどこにいっても社名をいれば、ほとんどの人が知っている、そんな状況においては、利用者以外にもより顧客という視点を広げて考える必要があるのです。

UXデザインやUX戦略を行う人が増えてきました。しかし、その上位であるブランド体験(BX)まで俯瞰して考えられる人はまだまだ少ないのが現状です。ネオマデザインは今後も UX, CX, BX とそれぞれをしっかり提案していきます。ぜひお気軽にお声掛け下さい。

関連リンク

UXとBXの違い、BXについて記載のあるブログや記事です。内容としてかぶる部分もありますが、わかりやすいので是非こちらも読んでみてください。

BX(ブランド体験)向上のカギはCX。君はUXばかり見ていないか?(Workship Magazine, 原文:Rashi Desai 翻訳:Mariko Sugita)

「顧客体験」の先に見据えるべき「ブランド体験」戦略とは (Adobe)

UXのユーザは誰? – ネオマデザインの考えるUXとは


Michinari Kohno

Neoma Design CEO, New Business Coordinator, Beyond UX Creator, UI/UX Designer