グローバルUX:日本と世界の違いを事例から

グローバルUX:日本と世界の違いを事例から

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前回の blog “Ctalks2020でグローバルメーカーとUXデザインについて語る” で書ききれなかった、世界市場向けの商品やサービスの事業開発におけるUXデザインについてを分かりやすい実例と共に紹介したいと思います。上流概念やUXスキームの話ではなく、実際の商品やデザインについて焦点をあてて説明します(一部は Ctalks2020 のセッションで話をしています)。

イントロ

私がソニーに勤務していた頃、新しい商品、サービスそしてそれらに関わるインタラクションデザイン開発にしろUI開発にしろUXデザインにしても「日本国内のみターゲット」ということはまずありませんでした。それはソニーらしいというか全世界がターゲットという、今考えると恐ろしいくも非常に貴重な体験をさせてもらったと思っています。入社してから22年ほど、ずっとそういう環境にいたこともあり、今でも私は「世界市場や世界トップの技術」レベルの視点から考えることが多くあります。

日本市場と世界市場では当然ながらその規模に大きな差があるのは当然ですが、単に対象人数が1桁2桁かわるだけではありません。カルチャー、慣習、生活レベル、宗教など様々な違いがあります。UIやUXデザインは人間の話だから万国共通じゃないのか、と思う人もいますが、そんなことはありません。残念ながら日本人ですら、UIの好き嫌いや価値観は様々で苦労しています。

日本の常識は世界の非常識?!

ある土地に長く居るとその土地の常識が自分の常識になっていきます。これは悪いことではないのですが、グローバル対応を目指すUIデザイナ、UXデザイナにとっては、より高い視野と様々な常識と価値観で考えていくことが必要になります。

さてここで皆さんに質問です。

下記は架空の会議の参加表です。我々日本人は違和感なくこの表をみますが、海外の人にみせると、この表を認識できない、混乱します。それはなぜだかわかりますか?

我々日本人は、「○」(マル)、「×」(バツ)で正誤を示します。つまり○は参加できる、×は参加できないと認識します。

一方、海外では、「×」は「チェック」(checked) の意味が強く、ネガティブ(否定)ではありません。つまり、「×」が参加できると認識されます。つまり「✓」チェックマークと同じ意味でが、日本の教育現場では「✓」マークは「不正解」の意味になりますよね。そして、「○」はネガティブというよりも「ここは要確認」という意味にもなります。または「決まってない」の意味に捉える人もいるようです(この○に関する解釈は各国でも異なってきます)。

余談:この○×✓の違いは、名探偵コナンのアニメ779-783話「緋色シリーズ」で重要なヒントになっています。コナン好きな方、ぜひ確認してみて下さい。

次に、PlayStation のゲームパッドのボタンは、PS1からPS4まで共通して ○×△□ ボタンがあります。

PS4 Dual Shockゲームによって異なりますが、システムのGUIでの操作において決定は「○ボタン」でキャンセルは「×ボタン」が日本向けPlayStation の標準設定です。実はこの設定、海外向けは、逆になっています(正確にいうと日本向けが逆なのですが)。つまり、決定が「×ボタン」でキャンセルが「○ボタン」なのです。知ってましたか?PS開発ツールでは、グローバル設定が基本なので日本と逆。これに慣れると、自宅のPSをさわるとつい逆におしてしまうという失敗を何度も経験した記憶があります。

なお、PS4では地域を「日本」にしていても、×ボタンを決定に設定から変更可能(PS4 Manualより)です。

私の体験上、UIに関して言うと、国や地域でさほど大きな違いを意識する必要はありませんでした。ユーザビリティなどUXデザインを意識して設計していけば大きな問題ありません。ただし、言語の差は意識する必要があります。日本語では漢字が使えるので、同じことを伝えるにも短い文言で済みますが、ロシア語では非常に長くなってしまいます。そういった部分を意識できているかどうか、上流設計やGUIデザインでは重要になります。

近年流行の音声やジェスチャを使ったNUI(Natural UI)に関してはこの地域差が顕著にでてきます。
VUI(Voice UI) は、言語に密接に関わります。単純にその言語に翻訳すればいい、というわけではありません。また手や顔などを使ったUIも注意が必要です。
日本人は頭を縦に振る動作を肯定、顔を左右に振る動作を否定と思いますが、ブルガリア、インド、パキスタンなどの国の一部では、頭を左右横に振る動作が肯定なのです。これは先のPlayStation のゲームパッド同様に真逆の意味になるのでうっかり知らないで実装すると非常に危険です。若干レアケースかもしれませんが、「自分の常識=日本の常識=世界の常識」と考えるのは危険です。

デザインに関しても当然ながら地域差はでてきます。
そもそもデザインは個人の嗜好性もかなりありますし、国・地域差・世代差・男女差色々と影響される要因があります。とはいえ、流行りやなんとなくの好みの方向性が各地域である程度はあるようです。

日本と世界のデザインの嗜好やサインの違い

たとえば、自家用車を例にすると、

日本:白黒銀のグレーカラーが売れ線、ミニバンが非常に多い
海外:赤青黄など個性豊か、ミニバンは商用車扱いでセダンやRV(SUV)多め

もちろん国によって違いはあるにせよ日本はわりと特殊な市場に見えます。派手な色が避けられるのは、自動車だけでなく家電でも似た傾向があります。

公共空間のサインも非常に違いがあります。
ゲームや家電のカスタマーサポートセンターに届くユーザーのフィードバックを検証していたとき、日本人は「自分のやりたいことや探していることがすぐに見つからない事に対する不平不満」がとにかく多かったのを覚えています。試行錯誤しないでわかること、に重みをおく人が多いようです(あくまでも傾向として)。

ここから導き出された私の仮説として、空間美よりも「他人に聞いたり試行錯誤する時間よりも、自分で分かるようになっていること」を重視したことにより、日本では、テプラなどによる行き先表示や指示が空間あちこちに見られる状況になったのでは、と思っています(それ以外にも理由はあるでしょう)。駅の中の多言語表記サインも、どんどん言語が増えていくのですが、本当にあれはUXとして正しいでしょうか。過剰に増えていくサインがむしろ複雑化させて分かりにくくしていないでしょうか。

その他、興味がある方は、トイレの男女のサインにおける色の違いについて、ネオマデザインブログ「トイレのサインから見る、人の認知能力とUX」に記載してありますので、こちらも合わせて読んでみて下さい。そんなことも日本固有なのか、と驚くと思います。

ローカライズ

グローバルで展開さえるプロダクツにしろサービスでは、「ローカライズ」といって国ごとに言語などの対応を基本的に実施します。映画を例にたとえると、その国の言語に翻訳して吹き替えを行います。ポスターなどもその国向けに修正されます。内容によっては、年齢制限されたり、一部の映像がカットされたり修正されたりしています。ゲームコンテンツも同様です。

これらのローカライズは非常に時間も労力もかかる作業になるので、基本的になるべくローカライズの手間を省くように基本設計は考えなければなりません。ソフトウェアは、こういった柔軟性に強いのですが、ハードウェアはそうもいきません。この国ではこのボタンをつけて、この国では外す等、想像しても大変で非現実的です。

ところで、Apple の iPhone のハードは全世界で共通と思われていますが、実は違いがあるので知ってましたか? 中国の iphone XR/XS, 11シリーズは2枚の物理SIMが刺さるデュアルSIM対応なのです。本体筐体はぱっと見た目は同じですが、SIMカードトレイにSIMが2枚入れられるようになっています。これによって、2つの電話番号を使いわけたり、電話用とデータ通信用のサービスをわけたりできるのです。面白いのは、この中国製の iPhone で使う iOS は、中国向けローカライズ版ではなくグローバル共通のため、言語設定を日本語にすれば日本語にして使うこともできるのです。

iPhone11 Dual-Sim の説明(Apple 公式日本語マニュアルより)

まとめ

日本人向けの日本での事業を考えるのであれば、今回の記事は杞憂ではあるものの、一歩外にでれば、常識が変わる、ということはUXデザイナーでなくても知っておくと視野が広がると思います。

「日本はガラパゴスだ」と言われることが多いのですが、たしかに UI, UXにおいてもそれは一部あたってるとおもいます。しかし、それは良いとか悪いとかではなく、そういうカルチャーである、と一端捉えつつ、ニュートラルかつ高い視点から体験価値やデザインを考えていく、それが重要です。

この数年でUXについてはかなり浸透してきて、UXデザイナーも国内で増えてきました。
一方でグローバルに対応できるUXデザイナーはまだ少ないように感じます。大手グローバルカンパニーにはもちろん居ると思いますが、ノウハウ流出を恐れてか表舞台にでてくることは稀です。

ネオマデザインでは、本記事でお話したようなグローバル向けのビジネスに対してのUX(顧客体験)創りや次世代技術を使った新規事業、プラットフォーム化などのコンサルティングやノウハウ伝授を行っております。世界規模でのUXデザインの経験をしている人はまだまだ国内では少ないのが現状です。昨今の事情を踏まえて、テレビ会議や電話での面談も可能です。ぜひお気軽にお声掛けください


Michinari Kohno
Michinari Kohno

Neoma Design CEO, New Business Coordinator, Beyond UX Creator, UI/UX Designer