新規事業コーディネーション、はじめました

新規事業コーディネーション、はじめました

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今年度からネオマデザインでは、『新規事業コーディネーション』サービス(コンサルティング)を行うことにしました。

厳密には、以前からずっとやっていたことなのですが、それを「コンサル」という業務名称で言いきるにはなんだか誤解されそう、ということもあり、新しく名付けました。新規事業コーディネーションとは一体なにをやるのでしょうか?

検索しても新事業コーディネーション、新商品コーディネーションはヒットしますが、新規事業コーディネーションは弊社のサイトがヒットするはずで、あまり聞かない言葉かと思います。

一言でいうと、企業内にある研究・技術をベースに新規事業、新規ビジネス、次世代製品やサービスを考え、企画提案し、場合によってはプロトタイプを創り評価していく一連の作業を行います。必要に応じてその企業外の技術やサービスも取り込みます。

こう聞くと、なんかよくある話じゃないか、と思いますが、国内大手一部上場のメガカンパニーですら(だからこそ)、この社内の技術研究(R&D)と事業をうまくつなげられない、次世代向けの開発の方向性が見えない、という悩みが多いのです。私がソニーにいたときも、同じ課題はありました。なぜこのような事がおこるのでしょうか?

顧客が今後欲しくなるものを考える

今の時代、単に技術シーズだけではビジネスにはなりません。

大手企業では、R&D部門を設置して多くのエンジニアや研究者らが最先端技術の研究と開発に余念がないと思います。しかし残念ながらその技術やシーズがそのままビジネスに繋がる事は近年は稀です。今はモノからコト消費の時代ともいわれていますが、プロダクツアウト型の製品や技術コアエンジンだけではもはやビジネスにはならず、ユーザーのニーズに直接届けるようなマーケットイン型が求められています。

というものの、私がソニーに勤務していた時、ユーザーが欲するものをヒアリングしたりアンケートし、その結果を素直に受け取って創っても市場に出ると案外受け入れてもらえない、という苦い(?!)経験があります。これについては、自動車を発明したヘンリー・フォードが格言を残しています。

If I had asked people what they wanted, they would have said faster horses.
(顧客に何が欲しいかを聞いていたら、もっと足の速い馬が欲しいと答えるだろう)

そして、あのスティーブ・ジョブズも同じような言葉を残しています。

Some people say, give the customers what they want, but that’s not my approach. Our job is to figure out what they’re going to want before they do.
(顧客が望むものをあたえよ、と言う人がいるが、それは私のかんがえ方と違う。顧客が今後何を望むようになるか、それを顧客よりも早く掴むのが我々の仕事だ)

恐らく顧客に聞いたままでいたらウォークマンもiPhoneも存在しなかったような気がします。マーケッターや顧客フィードバックばかりを気にしていたら、まさに「今後望むモノやコト」を創ることはできません。

研究開発(R&D)部門の問題

さて、企業のR&D部門は多大な費用をかけて日々技術開発をしています。基本的にはR&Dはコストセンターだと思いますが、日本の企業では「いつまでも世の中に出ないなら単なるお荷物」とレッテルを貼られてしまうようです。

よって、近年はR&D部門においても

  • 自分たちの技術開発がどのようなビジネスに短期的にかつ具体的に貢献するのか
  • どのようなユースケース(使い道)があるのか
  • 次世代の商品やサービスを研究部門からコンセプトや企画提案してくれ

といったことが求められるようになってきています。このような戦略がない技術開発は、それこそ、「何の意味があるのか?」と存在意義を求められ、揚げ句の果てには部署自体の閉鎖に追いやられてしまいます。そういう体験を何度も自分も体験してきました。実際は中長期的に種を蒔く、特許などの知財権利戦略、アカデミアとのコネクションなど色々と役割はあるわけですが…

ここで問題なのは、R&Dに勤務している研究開発者が急にそのような次世代製品やサービスに貢献できるユースケースが急に思いついてコンセプトや企画が考えられるか、ということです。これはかなり酷な話しです。私自身、研究開発というリサーチャー・エンジニアから始まり、コンセプト創案・企画提案、UXデザインやアートディレクション、実プロダクツ設計と実装などほぼ一通りやってきたから感じるのは、なかなか人間そうそうマルチにはできないのです。様々な部署を渡り歩いたから余計これは難しいと分かります。

やや乱暴な言い方をすると、研究開発やりつつ企画も考えろ、といってるようなもので、かなり厳しく難しい業務ですね。(私はそれが楽しくてやってましたが、ほとんどの研究開発者は嫌がります)

R&Dで働く方は自身の研究や技術に自信もあり誇りを持っています。当然その分野について人一倍詳しいわけなのですが、一般消費者が求めるモノとズレがそこにはあります。高機能過ぎてもユーザーはついてきません。そもそもその分野では凄くてもユーザーには何が凄いのかすら分からない技術もあります。結果として、体験(UX)としてその分野の研究者には凄くても、ターゲットユーザーにはイマイチという状況のユースケースを造り上げてしまうのです。

事実、私がいくつか担当した企業のR&D部門のユースケース提案は散々なものが多かったのです。

事業部門とR&D部門の隔離問題

一方でビジネス側、事業部にとってはR&D部門の研究開発をすべて理解はできておらず、既存または他社の技術ベースで考えることもあって差別化となるサービスやビジネスを創出しきれていません。また非現実的な機能を想定したりします。

マーケッターが前述のように「顧客の言う事最優先」な人だと、ユーザーがこういうの欲しいというからこの技術をやれ、なんで弊社ではその技術がないのだ!、という厄介な話しになります。
UXデザイナーがいる企業でしたら、ユーザー体験をしっかり押さえていきます。しかし、ここで問題なのがUXデザイナーが事業部側にいることで、社内の研究開発の深い部分まで理解できず技術の美味しいところを掴んでこない場合があります。UXデザイナーは、技術とビジネスとデザインの三つ巴とも言われますが、ビジネス寄りすぎるとうまく橋渡しできません。

また問題の一つとして、現場の声がR&D部門に届きにくい会社の構造になっている場合もあります。

以前、顔認識を使ったインタラクティブサイネージを開発して実際にビジネスを始めたとき現場から上がってきた要求に「マスクを付けていても認識してほしい」「サングラスをしていても認識してほしい」でした。しかし顔認識技術開発するチームは、顔認識のパーツ認識の精度や個人識別の精度を上げることが今後の目標であって、マスクやサングラスなどの対応など優先度が低かったのです。どっちをやるべきか、これは悩ましく戦略に委ねられますが、どちらにしろ、現場の声が届く環境は大事ではないでしょうか。

このようにR&D部門と事業部の間には双方の食い違いや隔離状態が度々起こります。自社の研究開発のコアピタンスを理解して新規事業や次世代ビジネスを創れるのは結局誰なんでしょうか?ネオマデザインならそれができます。

新規事業コーディネーションとは

私、弊社CEO河野道成はソニー株式会社に22年勤務しましたが、R&D部門と事業部両方に従事していました。兼務時代も長く、研究開発をしながら、ビジネス部門の開発や事業部門にも籍をおき、次世代の商品やサービス提案や企画を考えました。自分も研究をしながら、どの技術をどこに利用すると良いか、こんな新しいユースケースは自社にしかない技術から生まれるから進めるべき、といった提案をして実際にプロジェクトやビジネスにしました。

前述したように、要素技術や新規技術をビジネスまで昇華するのは非常に多くのスキルが必要になります。

R&Dのシーズとユーザーのニーズとそして新しい体験を考えるエクスペリエンスデザイン(UX)、これらをしっかりと見据え、そしてビジネスを考える以上戦略も考える必要があります。これまでの経験なども生かし、特にグローバルマーケット規模で新規事業への道筋を考えます。

 

この図にあるように、コンセプトやユースケース創りはもちろん、課題分析調査や実際にプロトタイプを制作して評価するといったことも規模によりますが対応します。

まとめ

弊社は今年度から新規事業コーディネーションをサービスとして行うことにしました。
これは、単に新規事業戦略を企画提案します、というよりは企業において、R&D(研究開発)のシーズも鑑みつつ、今後の次世代の事業に昇華できるように、または顧客体験価値あるものにするために、どういう研究開発をすべきか、どういうユースケースを考えていくべきか、その可能性を探る『技術と体験創造と戦略の総合コンサルティング』になります。

家電業界はもちろん、近年は自動車業界、インターネットサービス業界、そして最近は非IT企業からもお声掛けくださっています。特に、昨今は非IT企業においてもICT化、スマート○○化そして音声UI(音声対話)対応などが求められる時代、なかなかどこから手を付けていいか悩ましいところかと思いますのでその際にはぜひお気軽にお声掛け下さい。

そもそもどんなことをしてきたのか、どんなR&D技術を使ってユースケースを考えてきたか、といった話を聞いてからでも構いません。セミナー、講演、個別発表などもしていますので、まずはお会いしましょう。


Michinari Kohno

Neoma Design CEO, New Business Coordinator, Beyond UX Creator, UI/UX Designer