空間にもUXを 〜1冊の駅デザインの本から〜

空間にもUXを 〜1冊の駅デザインの本から〜

弊社の事業サービスに、スペースプロデュース(空間クリエイション)があります。空間においてもUX(顧客体験)的な視点で企画設計を致します。空間UXと弊社では勝手に呼んでいますが…

さて、空間にもUXが非常に大事であることを再認識させられた本に最近出会いましたのでご紹介しつつ、空間UXについて話をします。

駅をデザインする
"駅をデザインする" 赤瀬 達三著

“駅をデザインする” 赤瀬 達三著

著者である赤瀬達三さんは、黎デザイン総合計画研究所社長で現在は千葉大学特別講師もされているデザインディレクターです。営団地下鉄・みなとみらい線・つくばエクスプレスなどの交通施設(駅デザイン)から六本木ヒルズなどのサイン計画など古くから従事し活躍されております(HPのプロフィールより)

彼が携わった営団地下鉄やみなとみらい線などの交通施設デザイン/サインデザインについて、課題やそれに対して利用者視点に立ってどうアプローチしてきたか等を解説しています。

多くの鉄道利用者が困惑している状況に対して、「いかに分かりやすくするか」を軸に「安全で」「楽で」「居心地良く」「満足できる」を順に成立させていくかの解決法を本書で展開しています。

お気付きの方もいると思いますが、赤瀬さんのアプローチはまさにUX/UX Designの思想そのものです。以前Blog でUXハニカム構造を紹介しました。このUXハニカム構造の7つの観点をしっかり押さえているのです。

PeterMorvilleのUXハニカム構造

本書の中では、どこにも”顧客体験”, “UX” という言葉はでてきませんが、考えられている事はまさしくUXで驚きました。

空間とUX

空間全体で顧客体験(UX)を考えるというのは非常に難しいものです。公共空間にしろ商業空間にしてもまずは建築物がメインになります。もちろん建築業者の方々もその場を使う人の事や導線なんかを考えて図面を引き設計していきます。もちろん法令などの条件制約もあるなかで苦労しながらデザインされていると思います。

しかし、ここで先のUXハニカム構造において何を最重視するのかを見誤るととんでもないことになります。また、局所的にUXを考えるのではなく全体で、かつ、中長期的にデザインしていく必要があるのです。

以前、とあるエンターテインメント施設の課題視察をしたことがあります。そこは、地中海に面した中世の港町という設定で大航海時代をテーマにしています。近くには高級リゾートSPAなどが存在する場所です。

そんな壮大なコンセプト/テーマの施設にワクワクしながら向かったところ、一歩踏み込んだところで驚愕してしまいました。これ見てください。

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おそらく「分かりやすさ」「認知しやすさ」を重視したのでしょう。写真では分かりにくいかもしれませんが、まったく空間にとけこまないサインやのぼりがあちこちにありました。

テーマパークでは、飲食店とトイレを探すことはよくあるシーン(ユースケース)かと思います。しかし、せっかくのコンセプトを壊してまで、こんなに目立たせる必要があるのか、他にサポートする方法が色々あるのに、と思い残念な気持ちになりました。

一方、先日、出張で米国ラスベガスに行ってきましたが、非常に空間のUX度が高かったのが印象的です。

FASHIONSHOW at Las Vegas

FASHION SHOW at Las Vegas

写真、手前の台形のサインと後ろの円柱のサインはすべてデジタルサイネージです。後付け感をまるで感じさせません。ここに映るコンテンツ映像は、店舗やショーの広告ですがこの場所で流す事を意識しているのか、色使いやレイアウト、そして音量音質などにも非常に凝っています。場所にマッチしています。消費者金融のCMや芸人が出てくる事はありません。

さすがショービジネスのアメリカ、見せる事に関しては一歩も二歩も日本の先を行っています。

Cosmopolitan Hotel Robby Signage

Cosmopolitan Hotel Robby Signage

コスモポリタンホテルのロビーは角柱8つの4面をディスプレイ化し、かつ受付の壁面にも横一列でディスプレイが配置されていました。それぞれが連動していて、幾何学模様になったり、泡の映像で水槽っぽくみせたり、エレベーターのようにみせたインスタレーション的な見せ方をしていました(動画参考:YouTubeより)

ディスプレイも一つの空間要素として設計配置され、かつ、コンテンツも空間要素の一部になっています。それはもはや空間に存在するノイズではなくなっています。しっかりコンセプトとテーマに則したものになっています。

まとめ

空間を構成する要素は建築物/照明/サインだけではありません。
IT/IoT化に伴い色々なハード・サービスやコンテンツが見えないところで存在しています。空間全体としてビジョン/マスタープランからUX視点で考え全体最適化して行く事が大事だと考えています。そのためには、どの業界、どの担当要素においても顧客体験(UX)について理解してもらうことも重要です。

またUXにおいても何を最優先すべきか、優先順番についても良く考えなければ先の事例のような空間に合わない対応をしてしまいがちです。とにかく視認性重視なのか。ユーザーの声を全部聞いていたらキリがありません。UXに100点満点はありません。デザイン感性や直感だけでなく、落とし所をしっかり学問的なアプローチやユーザ検証しながら絞りこむのも大事です。

先の赤瀬さんの本には、なかなか関係者全体にUX的考え方が理解されなくて苦労された事が記載されています。ぜひ、IT系のUX屋さんも一度読んでみる事をお勧めします。業界違えどそこには通じるものがきっとあるはずです。

ぜひ空間UXに興味がある、考えていることがある、という方いらっしゃいましたら是非弊社までご相談ください….